
3.2船体構造の冗長性
船体は多数の部材が複雑に配置された構造で、冗長性のある不静定の溶接構造物である。疲労き裂はふつう溶接継手部の溶接止端から表面き裂として発生、伝播し、板厚を貫通後貫通き裂として伝播する。この冗長性のため基礎試験片でのき裂伝播挙動とは異なった特徴を見せる。本研究部会では船体構造部材中のき裂であるが故の特徴を実船構造部材を対象とした試解析、大型構造モデルの疲労試験を通じて明らかにした。
3.2.1船体構遣部材のき裂に対する応力拡大係数の解析
破壊力学の主張は“応力拡大係数が同じであれば、き裂伝播挙動も同じである”ことである。それ故、船体構造部材のき裂も応力拡大係数が計算できれば伝播解析ができる。応力拡大係数は構造部材中の溶接止端部の表面き裂の解析及び貫通き裂の解析が必要である。基礎試験片のき裂に関する応力拡大係数解析法は既に明らかであるが、不静定構造物の部材内のき裂に対する解析法は未だ十分でない。船体構造における疲労き裂発生箇所は溶接による板継ぎ及び骨と板の接合部である(図3.4参照)。その後、図3.5のように伝播し、更に、図3.6及び3.7のようのにフランジ材からウエブ材へ、外板へと伝播する。本研究部会では上記部材中の表面き裂、貫通き裂の応力拡大係数の解析法を提案し、実船の構造部材での発生を想定したき裂の伝播解析あるいは実損傷事例の解析が可能となった。

図3.4 疲労き裂発生箇所

図3.5 き裂伝播経路

図3.6 き裂伝播経路

図3.7 き裂伝播経路
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